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「くる話」#0 くる話

2018.8.10

有地 和毅

はじめまして。YOURS BOOK STOREのブックディレクターの有地和毅です。

「ブックディレクターです!」と、さも先史時代から連綿と続いてきた職業であるかのようになんの説明もなくするっと名乗りましたが、定時になったら即「ヤバダバドゥー!」な『フリントストーン』ではブックディレクターなんて見たことないし、ブックディレクターって一体どんな仕事だと思いますか?なるほど、ブックと言うくらいだからどうやら本に関する仕事ではあるようだけど実際になにをしているのかわかるようなわからないような、そんなイメージがある(というよりイメージがない)のではないでしょうか?自己紹介がてら、そんな疑問に少しお答えしたいと思います。

ブックディレクターは「本の何でも屋」と言っても良いでしょう。1冊1冊の本のセレクトはもちろん、選書全体の分類やニュアンスのコントロール、さらには実際にその場に行って何時間も(場合によっては何日も!)かけて本を並べたり、場を盛り上げるために本のイベントを継続して企画したり。いろいろなことをしています。しかし、ただいろいろなことをするだけではふわっとしてしまいます。ふわっとさせないためには明確なコンセプトが必要です。(反対に、ふわっとさせたい時はマヨネーズをほんの少し入れると良いでしょう。パンケーキの話ですが。)その場所はどんな場所で、どんな本が置かれるのか?どんな人が訪れ、どんな理由で本を手に取るのか?そうして手に取った本とどう関係していくのか?この一連のプロセスをデザインすること。つまり、人と本とをつないでいくために必要なすべてのことをコンセプトに基づいて組織化していくこと。それがブックディレクターの仕事です。(ババーン!)

ババーン!と自己紹介が長くなってしまいました。生きること自体が長い長い自己紹介なのだと言えなくもないですが今はそういう話じゃないですよね。わかってるんですけど、すぐわき道に逸れてしまいます。ニコルソン・ベイカー『中二階』(白水社)も延々とわき道に逸れてしまうというか意識の中でベリーピッキングするみたいに話題が移り変わり横滑りしていく小説です。物語の本筋ではなく、文章に散りばめられたものをなんとなく手に取ってはひとつひとつ見ていくうちに細部を読むこと自体に溺れていくという快楽もあります。辞書を引く時に、目的とは全く無関係な項目を延々と辿ってしまうこともあるでしょう。引っ越しの準備をしている時に、昔の写真を見つけてしまいずっと思い出の中をさまようのにも似ていますし、急に具体的な話になりますが、洗濯機を回してさっきピーって音がして洗い終わったから早く干さなきゃいけないんだけど、それもう本当わかってるんだけど、だらだらとSNSで誰かが言ってた映画をNetflixで見始めてしまったりそれも飽きちゃって冷凍庫からパピコ取り出して2本とも食べちゃったりなんかしてしまうあの感じ!

選書や棚作りも途中まではそれと似ていて一冊の本から無数に分かれている枝を辿り、その先にある本、さらにその先にある本というつながりをまずは探索していきます。そうして必要とされる棚を満たす本の全体が見えてきたら、次はひとつひとつの要素を結び直して網の目にしていく作業がはじまります。探索による拡散、そして収束。

さて、ようやく本題に入る準備が整いました。YOURS BOOK STOREブックディレクター有地和毅の「くる話」では、探索、拡散、収束という選書のプロセスを小さなエッセイの形にして提示していきます。テーマは「くる話」です。(くるはなし、と読みます。)「くる話」って何でしょう。話は話、トークです。イッツ・オンリー・トーク、チープ・トークです。問題は「くる」です。

「くる」というのは「台風が来る」「ちょっと川を見てくる」(危ない!)「わかってくる」とか動詞、補助動詞としての「くる」です。この「くる」は継続、変化、ベクトルを示します。「くるくる」「狂う」や「circle」「crew」なんかにもつながってきます。これは回転、円、つながりを示します。「グッとくる」「込み上げてくる」を「くる」とだけ言ったりもします。これは感情、情動、心動かされること。「くくる」「つくる」といった動詞の一部だったりもします。これら「くる」の性質は多様ですが、一言で言うなら「動き」です。起点があって終点がある動き、時間幅のある動き、物理空間の動きと同じことば(高まる、上がる、ダウナー)で表現される心の震え(バイブス!)、動きが生まれるための関係性、そんな「動き」のイメージを「くる」に込めました。

今回はわたしブックディレクター有地和毅の自己紹介と「くる話」についての話でしたが、次回からは実際に「くる話」を綴っていきます。身近な人と話し方が似て「くる話」、夜道を何かが迫り「くる話」、猫が家に「くる話」、新しい何かをつ「くる話」、いろいろな「くる話」をしたいと思います。「くる」瞬間はとても印象が強くて「くる話」をするだけで、生きていることの体験のほとんどを語り尽くせてしまう!かも知れません。

最後に、「くる」にはもうひとつの意味があります。「ページを繰る」の「くる」です。連想を辿り探索し拡散した「くる話」は「繰る話」、つまり本の話に帰って「くる」のです。というか、本当に帰ってくるのでしょうか?ちゃんと帰って来てね。

それでは次回が「くる」のをお楽しみに!

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