CONTACT FORM


FOLLOW US


購買考 その2 贈るために本を買う

2018.9.10

林 和泉

 

今年の誕生日、友人から本をもらった。
諏訪敦さんの画集「Blue」(青幻舎)。

 

大学時代から美術展に一緒に行く仲だ。
好みはお互い熟知していて、一緒に成山画廊に諏訪さんの作品を見に行ったこともあった。

いつも通り美術展に行った帰り、おもむろに渡された素っ気ない茶封筒を開けると、じんわり嬉しさが広がった。

 

1学年下の友人は、以前にも、一足先に大学を卒業する私に、卒業祝いとして東山魁夷の画集を贈ってくれたことがあった。

 

自分のために買うには高くて少し躊躇うようなものだったり、
興味の幅を広げてくれるようなセレクションだったり、
本を贈られることはとても新鮮だ。

 

大切に読み、本棚の特等席に飾った。その後も何度か読み返す。

 

 

”大人が子供に贈る本(絵本)” は比較的身近だが、
”大人が大人に贈る本” は、自分の周りではあまり見ない光景。

私に本を贈ってくれるのも、思いつく限りその友人1人だけだ。
本のプレゼントは相手を選ぶようで難しい気がしていた。私自身あんまり経験がない。
誰かに贈ったことがあるだろうか、と記憶を辿ると、一度だけあったことを思い出す。

(こっから回想シーン入ります~)

 

 

 

相手は中学の頃からの親友。
彼女は学生時代フェンシングの全日本強化選手だったが、膝の靭帯を切る怪我してしまい、数ヶ月に及ぶ入院生活を強いられた。

 

明るくて活発な彼女は友人が本当に多く、毎日のように入れ替わり立ち替わり誰かしらお見舞いに来ている様子が、SNSから見受けられた。

 

当時京都に住んでいた私は、夏休みを利用して、愛知県にある病院へお見舞いに行くことにした。

毎日のお見舞いで彼女の元にはきっと沢山のお花やお菓子が贈られている。
それに実は、彼女は甘いものが苦手だ。

何を持って行こうか…
悩んだ挙句、ベタだけれど本を持っていくことにした。
彼女と私は、中学の頃、本と音楽の趣味がぴったり合って、いつもどちらかの話をしていたからだ。

それに、本なら、面会時間が終わり一人になる瞬間に寄り添うことができる。なかなかお見舞いに行くことができない代わりに、長く寄り添うことができる。

 

人にあげるためなんだか、自分が読みたいからなんだか曖昧だが、
当時気になっていたけれど読んだことのなかった、芥川賞直木賞あたりの女性作家の作品を4冊選んだ。
たしか、御池のふたば書房と烏丸三条の大垣書店で2冊ずつ買ったはずだ。

(自分のためなら、迷った挙句みみっちく1冊だけ買うところだが、人にあげると思えば4冊なんてチョイだと思うのは何故なんだろう)

 

藤野可織「爪と目」 (新潮社)
絲山秋子「妻の超然」(新潮社)
西加奈子「白いしるし」(新潮社)
川上未映子「乳と卵」(文藝春秋)

 

それと原稿用紙を1綴り。

 

頼まれもしないのに、彼女にあげる前に4冊とも読んで、それぞれ400字詰原稿用紙1枚(文量指定)で読書感想文を書いた。
それを各本の一番後ろに挟み込み、束ねてラッピングした。

 

今思えば(というかその当時も思ってたけれど)、相当に気持ちの悪い贈り物だと、ちょっと戦慄する。
友人もよく引かずに受け取ってくれたなと思う…
引かないどころか、全ての本と感想文を読んで、彼女なりの感想をメールしてくれた。とても嬉しかった。本当の意味で ”受け取ってくれた” と思った。

 

 

気持ち悪さを承知で感想文付きにしたのは、
何か私なりのオリジナルな要素を加えたかったからだと思う。

 

本はどこで買っても同じだ。
内容も装丁も値段も、基本的には変わらない。
もしかすると、だからこそ “贈り物” という特別感を要する選択肢になかなか入れないのかもしれない。

他のモノよりも、好みの差が大きく、思想性も強いものでもある。
それに “読む” という能動的な行為を相手に求める。

様々な、贈るのを躊躇う要素がある。

 

けれども贈ってみたり、贈られてみたりを経験してみてわかる、嬉しさや楽しさや難しさがある。

好みの差や思想性や ”読む” ことの能動性が、本という贈り物ならではの強みになることが、きっとある。

 

 

自分で読むためだけではない、本の買い方は実はとても面白いのではないかと思えてきた。

本が、贈り物の選択肢としてもう少しメジャーになるように、色々と企てたいと思っている今日この頃。

 

 

そんな第2回。
本日もお付き合いありがとうございました♡

 

※写真は内容と全然関係ないんですけど、
BOOK AND SONSで展示中の「CHOPPED LIVER PRESS」。
かっこよかったので是非。9/30まで。

最新の投稿

日本出版販売株式会社

〒101-8710

東京都千代田区神田駿河台4丁目3番地

お問い合わせ