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購買考 その3 鼻息荒く本を買う

2018.10.9

林 和泉

これは私の原体験である。

 

 

 

近所のスーパーの向かいに、

10坪ほどの小さな個人書店がある。(いまもある。本当に一生なくならないで欲しい。)

 

少なくとも月に1度はNHKラジオ英会話のテキストを買いに行く馴染みの本屋さん。

お店のおばさんはいつも会計の時に、いちごみるくの飴をくれる。大抵2つ。私と姉の分。(よくこっそり2つ食べた。)

 

お店の8割は雑誌とコミック。おじさんとおばさんが2人でやっている。そんなごくごく普通の町の本屋さん。

 

 

年に1度か2度、その本屋さんに鼻息荒く向かう日があった。

小学生時代、どハマりしていた「ダレン・シャン」シリーズの発売の日だ。

 

小学生のお小遣いにはやや高額の1500円ハードカバーを買うために、駄菓子屋さんを数回我慢したり、「りぼん」を姉に買わせたりした。

 

指折り数えて待ちに待った発売日、学校が終わると、お小遣いを首からぶら下げて真っ先に本屋さんへ走った。

なんだかドラマの中みたいだけれど、全部ほんとう。

 

本は、いつもちゃんと発売日に遅れることなく用意されていた。

 

 

 

 

取次の仕事をしてみて初めてわかったことだが、

児童書のコーナーすらない町の書店さんが、発売日にその1冊を用意するためには、客注として細心の注意を払って対応し、漏らさず配本をつける必要がある。

幸い、書店さん(と取次!)のおかげで、鼻息の荒い私が手ぶらでうなだれて帰ることはなかった。

 

欲しい本が買える状況を作ってもらうことに感謝したことはあんまりなかったかもしれない。

でも実は結構大変で、驚くほど沢山の工程を経て、1冊は店頭に届く。

どこかの工程の小さなミスやトラブルで簡単にその状況は失われる。

買えないときの悲しさは、待ちに待っていればいるほど致命的で、そのたった1回が書店さんへの信頼をなくしてしまうことになる。

 

書店営業を担当していた時、そういう場面に何度も遭遇し、お叱りを受けたこともある。当然だ。

 

私たちの取次という仕事は、欲しい本が買える状況を当たり前のように作り続けることだ。

自分の経験と重ね合わせると、より一層鮮明になった。改めて身の引き締まる思い!

 

 

 

いまも地元に帰ると、よくその書店さんに顔を出す。

日販に就職したことを伝えた時も、

「あら~いつもお世話になってるのよ!」と喜んでくれた。(なんと日販のお取引書店さんだった!わー!)

 

おばさんは相変わらず、いちごみるくを2つくれる。

この間はティーン誌のキラッキラな付録もおまけにくれた。(私もうアラサーですとは言えなかった…)

 

 

 

これが、いま私がこの仕事をしている原体験としてあるのだと思う。忘れたくない。

 

最近帰っていないので写真はネットから拾ったものですが、今度ちゃんと撮りに帰りたいな。

 

少しノスタルジックになった第3回。

本日もお付き合いありがとうございました♡

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